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ちいさなチカラ

【毎日更新】エイズキャリア、膀胱麻痺、甲状腺機能亢進症を含む、黒猫・キジ白・ハチワレのごきげんさん日記


by 咲 セリ

フィナーレのあとで



2009年のクリスマスイブ
皆さんは、どんなふうに過ごされましたか?

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我が家には…

朝から、ちいさな、だけど、世界一おおきな奇跡が起こりました

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このお話は…

とても、とても、長くなると思います




だから、できれば、今読んでくださっている皆さんが、
一番、元気なとき、ゆとりのあるとき…

ハダカの心でいても許される場所で、読んでいただければうれしいです














それは、24日の朝、7時ごろのことでした


私はまだまだ爆睡中の夢の中…

ダンナさんは、祝日明けで会社に行く準備をしていました


顔を洗い、歯を磨き、服を着替え、お茶の準備をし…
いつものことを、いつものようにしている間、
猫たちはごはんを食べ、あいは、床暖房から猫ベッドに移動しました




「そろそろ、いくか…」
ダンナさんが、リビングの扉を開けようとして、振り返ったその時−


なぜかビーが、猫ベッドをじーーーっと真剣にみつめています



不思議に思い近寄ると、中にいたあいがふらふらと立ち上がり、
そのまま、へたり、と、伏せるように床にへばりつきました



なにか、おかしい



そう思ったダンナさんは、あいを抱きかかえ、階段をのぼりました



「セリ、セリ!」
私は夢の中でその声を聞き、まぶたをこすりながら、目を開きました


私が起きるや否や、ダンナさんが枕元に腰掛けます



腕の中では、全身をダンナさんに預けるように脱力したあいが、
「ウ…ウ…」と、まるで寝言のような、ちいさくてやわらかな声をもらしていました



話に聞いていた発作だろうか−
二人の頭をよぎりますが、それにしては、あまりにかぼそい声でした



ダンナさんが、あいを抱いたまま、
私は、あいの顔のまんまえに自分の顔がくるようにしゃがみ、
あいの目を見つめて、優しく、子供をあやすように声をかけました


「あい?あーい?どうした?あーい」


二度、三度、ちいさなしゃっくりをすると、
あいは、宝石のように澄んだ目で、じーっと私をみつめました



そして



うなずくように、まばたきをしました



「…あい?」



ゆっくりと、あいが、目を開きました



瞬間、黒目がまんまるに広がっていきました



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何が起こったのかわからないままあいを抱くダンナさんとは違い、
私は、今まで何度か猫を見送った経験から、
あいの瞳が、私たちの見ている現実を映さないものに変化したことがわかりました



「息…してる?」


私が聞くと、ダンナさんは泣いたまま首をかしげました


「わからないから、ここ、ねんねしようか」


いつもの枕もとのタオルの上を指さすと、「ごめんな、寝転がろうか」と、
ダンナさんがあいを横たえました


少し開いた目は、深く潤った黒曜石みたいで、
わずかに隙間の開いた口からは、薄桃色の舌が覗いていました


あい」らしい、「あい



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ピンと、きませんでした



こんなに…
こんなに…本当に眠るように、その瞬間を迎えるなんて…



麻痺も、硬直も、悲鳴も、吐血も、何一つありませんでした



だから、私たちは、ずいぶん長い間、ぼうっとあいを抱きしめていました


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クリスマスイブに向けて、
私はあいへのプレゼントとして、鉢植えを買っていました

春、寄せ植えにして、あいがよく眺めていた白い花と、ラベンダー


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こんなことなら、クリスマスを待たず、買えばよかった

ケーキだって、ごちそうだって、昨日食べればよかった

クリスマスの買出しになんて行かず、ずっと家にいればよかった




だけど、きっと
それは、あいの望むことじゃなかったんだよね…





ダンナさんが会社に電話をかけると、所長さんは快く休暇を承諾してくれました

もしも、ダンナさんが家を出るのが、あと数分早ければ…
ビーあいの異変に気付かなければ…

ダンナさんは会社に行き、私は寝室で眠ったまま、
あいはひとりで最後の瞬間を迎えることになったでしょう




おしえてくれて、よかった




しばらくして、母にメールを出しました

あいは、おねんねすることにしました』…と

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そういえば、と思い出し、
母伝てでいただいていたラベンダーのポプリをあいに持たせました



私の大好きなにおい

そして、たぶん、あいも好きだったにおい






「おねんね」したままのあいと一緒に、
私たちは、家族そろってクリスマスパーティーをしました



願いが、かなったよ



最高のクリスマスが迎えられたよ







ふと気付くと、ビーが、眠るあいに、
まるでキスをするように、一瞬、寄り添いました


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特別な一日



だけど、大切な思いがあるのなら、
本当は、「特別」なんて、待たなくていいんだ



明日なんて、ないかもしれないから



いま



いまを…





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ずっと、あいを愛してくださり、ありがとうございます。
そしてきっと、これからもあいを愛してくださるであろうこと…本当にしあわせに思います。

今はまだ、うまく言葉にできません。

だから、たくさんお礼を言いたいのに、
皆さんのお祈りのおかげで迎えられた穏やかなフィナーレのお礼を言いたいのに、
しぼりだすような「ありがとう」しか、出てきません。

ありがとう。

ゆっくり…自分をとりもどせるよう、ゆっくり、向き合います。


PS
あいのためにお花を贈りたい…とのあたたかいお言葉、心から感謝しています。
ですが、本当に気持ちだけでじゅうぶんです。

あいは、すでに、皆さんから沢山の「愛の花」をもらっています。
それでも…と思ってくださる方は、どうかひとつだけ、わがままなお願いを聞いてください。
生きている命であるお花を、あいのために手折っていただくのは心苦しいです。
切花は…もっと必要な方のためにとっておいてあげてください。








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by sakiseri | 2009-12-25 00:20 | 主役あいの日常(緩和ケア編) | Comments(0)